No.482 2020年 10月号
コロナ禍のいま、思うこと
新型コロナウイルスの感染拡大は映画・ドラマの撮影現場にも甚大な影響を及ぼしています。
プロデューサー協会各理事の皆さんに「コロナ禍のいま、思うこと」というテーマでコメントを頂きました。
コロナ禍でいろいろなことが変わってしまいました。経済活動や働き方は目に見える変化だけれど、人々の心の中では目に見えない変化が、多分、価値観の問い直しが起きているんじゃないかと思います。いざという時、ほんとに心を支えてくれるのは何なのか、多くの人が自問自答し、自分なりの答えを見出そうとしているのではないでしょうか。ワクチンができれば元に戻る、そんな単純なことではないと思います。そしてもちろん、映画もドラマもそのことを踏まえて制作されないといけないでしょう。
木田幸紀 副会長
プロデューサー協会に入会してから早24年が経ちます。入会した時から会報委員会に所属しています。もはやライフワークですな(笑)。当時の大野委員長(テレビ東京)のおっしゃっていた「会員の役に立つ会報」を旨として発行してきました。もう一つ付け足すならば「百家争鳴」「談論風発」を目指すということでしょうか。 我々の仕事は「密」の最たるものです。ラグビーのモールのようなものです。密集しながら圧力をはね返しながら目標に向かっていく。これからも心のモールは崩さずに前に進んで行きたいものです。
香月純一 副会長
2011年震災の時にも「我々に何が出来るのだろう」と無力感に襲われたが、今回はその比ではない無力感の中に未だいる。ただ、調べてみると映画誕生直後にスペイン風邪の猛威に晒された映画業界は、その翌年には興行収入を大きく延ばしたそうだ。 下を向いている暇などないと自分を戒めて出来ることをやっていこうと思う。
山内章弘 副会長
適正な製作費の回復を願う 2010年代初頭にデジタル化を奇貨として30%削減された日本国内の映画製作費は、今回のコロナ対応で15%の出費増を余儀なくされていると推測します。これを機に残りの15%も戻すことで、スケジュールを含むスタッフの環境改善を断行して欲しい。そうしないと早晩スタッフが消滅します。監督と企画とキャストだけでは映画は作れない。コロナの脅威が消えた後も優秀なスタッフが生き残り、日本映画が持続発展するためのコストです。
富山省吾 常務理事
緊急事態宣言が発出されてドラマの収録が止まっていた期間、それでも新作ドラマが作れないかと企画を募集。ミニシリーズを2本、ドキュメンタリー&ドラマを1本放送することができました。 企画から放送まで3週間、脚本家や出演者との打合せはリモート、収録はスマホ、現場にはスタッフなし、美術や機材のセッティングも出演者側にお願いという番組もあり、こんな時だからこそ、出演者やスタッフのドラマ愛をあらためて感じました。
藤澤浩一 常務理事
この数か月であらゆるコンテンツを取り巻く環境に地殻変動が起きた。オンラインで楽しむための選択肢が劇的に増え、すべては生活者のオンデマンドに。そんなコロナ禍の中、映画「今日から俺は‼」が興行収入53億を突破できた事は大変嬉しい出来事だった。ひとつのコンテンツをネタに繰り広げられるリアル&ネットでのコミュニケーションの広がり方の凄さ…圧倒的リーチ力を武器にできる地上波起点の企画にこだわっていきたい。
福士 睦 常務理事
弊社は、コロナで、連続ドラマ3本の撮影を止め延期しましたが、その後、無事再開、感染者を出すことなく最後まで撮影することができました。これまでも、もちろん撮影はスタッフとキャストが「一丸となって」ではありましたが、コロナでも撮影を継続するため、本当に心を一つに「一丸となって」取り組んだことが撮影を可能にしてくれました。全スタッフ&キャストのその姿が目に焼き付いています。そして、その心と姿勢は今も崩さずです。凄いことだと思います。
那須田 淳 常務理事
これまでは、みなさんと同様、映画プロデューサーは止まったら死ぬ、とばかりに大型の赤身魚のように泳ぎ続けて来ました。でも、このコロナ禍の中、余分な予算を掛け作品の内容以外のことに神経を使ってまで撮影に入るのヤだな、ホント。何より映画が公開される時には、世の中が求めているものはこれまでと違うはずだし。だから今は、開発作品を選び直したり、方向性をポストコロナにチューニングするべき時だと思っています。
小岩井宏悦 常務理事
まさか朝ドラや大河ドラマが休止になるとは思いませんでした。どうやって撮影再開できるか、休止の代替番組をどうするか、前例がない事態に途方に暮れながら解決策を模索しました。 しかし現場はたくましいです。逆境を逆手にとってリモートドラマ、夫婦・兄弟・姉妹など家族二人をキャスティングしたドラマ、収録再開の模様そのものをドキュメントにしたドラマ、次々と新機軸が生まれました。クリエイティブのパワーが私たちの希望であり武器なのです。
若泉久朗 常務理事
この春は映画製作者も一時は思考停止状態であった。 だが、徐々に映画はヒット作品もあり、思考停止は良い意味でのリセットとなった。 終戦後わずか2か月で公開したリンゴの唄で有名な映画『そよかぜ』。映画人はどんな世においても製作の精神を忘れていなかったに違いない。 プロデューサーとはどんな時も、新しい製作形態を探りながら、あくまでソフトを作るのが使命であるとの気持ちを忘れず前に進んでいきたい。
椿 宜和 理事
新型コロナウイルス感染症拡大は三密、不要・不急の外出自粛、緊急事態宣言となり生活が一変、未曾有の社会変革を起こしてます。 コロナ禍未だ先行き不透明のなか、GoToキャンペーン、感染対策など見直されます。 その中で先ずは健康第一! 親睦委員会は感染予防対策に務め、親睦ゴルフを開催してます。 皆さん、たまには日光を浴び、緑の自然と空気に触れ、のんびり楽しい1日を過ごしませんか?
高橋信仁 理事
大変なご時世であり業界の存在さえこの先不透明な部分があります。手探りで模索していくしかないのだと思います。リモートドラマもいくつか見ました。やはり表現方法に限界ありますね。テレビドラマ、映画には限界はありません。そんな中、丸の内TOEIが名画座状態になり「仁義なき戦い」「遊戯」シリーズが大画面で見れました。あらためて映画は映画館の大画面で見るものだと再認識した次第です。6インチには負けずに業界を守りましょう!
本間英行 理事
只今撮影中
東宝映画 プロデューサー
川田 尚広
ドラマ『タリオ 復讐代行の2人』
2019年夏、東宝・映画企画部の蒔田光治さんと初めての企画打ち合わせをした時には、こんな世の中になっているとは思いもしませんでした。
その時の想定では、2020年の夏の東京はオリンピック一色。オリンピック明けに始まる連ドラとしてどんなモノを視聴者は観たいのか? というコンセプトで打ち合わせは進んでいました。スポーツ三昧の視聴者を取り返すため、ドラマ視聴習慣を取り戻せるような敷居の低いドラマがいいんじゃないか? 蒔田さん得意の本格ミステリーを軸足にしつつ、軽い気持ちで観られるポップなモノに出来ないか? であれば重厚なモノにしない方向だから思い切って若いキャスティングにするのも面白い。 そんな中、主演に浜辺美波、岡田将生の2人を迎えることができたため、それであればバディものにして、浜辺美波を20歳の弁護士。岡田将生を詐欺師にして、法律と悪知恵を駆使した痛快リベンジドラマに仕立てましょう、ということになりました。
そして、春を迎えていよいよ本打ちを活発にやっていきましょう、という頃に世の中はコロナ禍に覆われました。全ての準備はストップし、打ち合わせもままならず、撮影は暗礁に乗り上げるかと思われました。
本来の撮影は7月下旬〜9月末まで。
しかし、緊急事態が発出されて、4月から全ての作業がストップ。5月から合流予定のスタッフも全員自宅待機となりました。
そして5月の下旬、ようやく緊急事態が解除され6月1日からスタッフルームを開くことができました。
しかし世の中のコロナ禍は一向に収まる気配がなく、先行した他の組も対応は各社バラバラで、我々も手探りの中準備を進めることに。
そんな混乱の中、8月6日にようやくクランクインを迎えることができました。
コロナ以前の現場とは様相が一変。
車両は満席で稼働することはNG。
移動メシもNG。
現場では2時間ごとの換気タイム。
食事中の会話もNG。
お茶セットの設置はNG。
専任の衛生部を設置。
また、本来オリンピック対策で東京での撮影が困難だと予想して山奥の設定の回を作ったのですが、コロナ禍の中では移動制限。
数多くの逆境が発生しました。
そして、例年以上の猛暑です。
屋外ロケでは猛烈な暑さの中、マスク着用を強いられる環境。
そんな中、キャスト、スタッフ皆さんは、頑張ってくれています。
10月9日の初回を目指し、目下絶賛撮影中。
NHKではなかなか観られない、斬新でポップでユニークなドラマをお送りできればと思っています。
どうぞ金曜日22時はNHKのドラマ10「タリオ 復讐代行の2人」をご覧ください。
私の新人時代
TBSテレビ
コンテンツ制作局 ドラマ制作部
チーフプロデューサー
飯田 和孝
2006年4月、入社2年目にドラマに配属されて15年、ドラマの仕事には、「熱量」や「想い」と同等に「人」が本当に大切なのだと改めて感じている。
配属されてすぐ昼ドラマ『吾輩は主婦である』の5番目のADの仕事を与えられた。当然、カット割りなど分かるはずもなく、「とにかく声だけ出せ」という先輩ADの指示のもと、「スタンバイ中です!」と何のスタンバイをしているかも分からず声を出す。「俺たち待ち?」と照明さんに怒られ、「邪魔」とカメラマンにどかされる、そんな3ヶ月を送った。
終わるとすぐ『セーラー服と機関銃」。今度は真逆のロケドラマ。7、8月の炎天下、屋外のデイシーンで210カット、後にそれが異常な分量だと知るのだが、『吾輩〜』にも増して何を撮っているのか分からない状態。更にメインロケ地が浅草で、朝4時にマイクロに乗り込み、目を瞑ったと思ったら20分後には現場で走っている、という約2ヶ月。「マイクロ移動で寝れるしロケの方が楽」先輩ADから授けられた〝金言〟は脆くも崩れ去った。浅草って近いんだ…
ただただ必死だった二つのドラマの記憶は、今でも鮮明に蘇る。しかしその中でも明確に思い出すのは、異常なまでに強い「想い」を全員が持っていたこと、そして「人」を大切にしていたことである。時に厳しく叱り、相手が俳優であろうと叱咤し、全ては「視聴者に対して誠実に」という信念の下に全員が動いていたことは今でも忘れられない。リモートが推奨され、人と会わずに物事が進行する現代において、改めて大切にしなければならないと痛感している。
ドラマや映画が再開し、苦心しながらも無事に放送、公開を迎えている全ての人達に敬意を表したい。私も仕事ができる幸運に感謝しつつ、「人」を大切に、誠実に視聴者に向き合って、仕事をしていきたいと、今は思っている。テレビドラマが、不急であるかもしれないが、不要ではないものだと信じて…
事務局だより
◎正会員入会
- 守 幸也(CHARIOTS MOVIE)
- 山田 力也(オフィスグラスハート)
- 市川 哲夫(功労会員 元TBS03~07常務理事・エランドール賞委員長)
◎訃報
- 元日活の蛭川 克氏(功労会員)は去る1月5日逝去されました。
ご生前のご功績を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。 - 元東宝の森岡道夫氏(功労会員)は去る8月13日逝去されました。
ご生前のご功績を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。
◎退会
- 北川 雅一(TBSスパークル)
- 岡本 伸三(NHK)
- 吉川 邦夫(NHK放送文化研究所)
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インフォメーション
◎会議の記録
- 9月18日(金) 第2回定例理事会(東映本社8F)
- 9月23日(水) 会報委員会(リモート)
- 9月30日(水) 第1回エランドール賞委員会(リモート)
◎会議の予定
- 10月14日(水) 18時30分~ 第3回定例理事会
会場/東映本社8階会議室(中央区銀座3−2−17)