No.495 2022年 3月号
2022年 エランドール賞 式典は見送り
本年2月3日(木)のエランドール賞授賞式は、コロナ感染の拡大につき昨年同様、中止の已むなきに至った。しかし、事前(1月25日)に都倉俊一文化庁長官より、式典に寄せたお祝いのビデオメッセージを頂戴していたので、その全文を掲載する。
文化庁長官都倉俊一でございます。
二〇二二年第四十六回エランドール賞授賞式が開催されるにあたり、一言ご挨拶申し上げたいと思います。
はじめに、この度、栄えある各賞を受賞された皆様に、心からおめでとうとお祝いを申し上げます。エランドール賞は、昭和三十一年に創設された歴史ある賞であり、過去に受賞された方々の華々しいご活躍は、これは皆様ご承知のとおりでございます。今回受賞された皆様におかれましても、より一層飛躍され、今後とも多くの方々に感動を届けてくださることを期待しております。
言うまでもなく、映画・テレビドラマは、緻密で多彩な芸術表現が織りなす総合芸術であるとともに、国際文化交流にも大きな役割を果たしております。
また、新型コロナウイルス感染症が日本中・世界中で猛威を振るい続けている昨今、魅力ある映像作品は、人々の心を癒し、楽しませ、勇気づける上で、欠かせないものであると確信しております。改めて、日々、製作に尽力されている皆様に敬意を表しますとともに、心から感謝を申し上げたいと思っております。
我が国の素晴らしい文化を創造・発信するためには、皆様のお力が必要不可欠であります。文化庁といたしましても、我が国の文化芸術の振興に全力で取り組んでまいりたいと考えておりますので、引き続き、皆様のご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
結びに、関係各位の皆様のご健勝・ご活躍、そして一般社団法人日本映画テレビプロデューサー協会の一層のご発展を祈念いたしまして、お祝いの言葉とさせていただきます。ありがとうございました。
エランドール賞 受賞コメント
2月3日㈭に行う予定だった授賞式(新人賞除く)は、3月22日の理事会で行うことになりました。
エランドール新人賞の贈賞は、今後、個別に出張して実施する予定です。
○映 画(プロデューサー賞)
「花束みたいな恋をした」
リトルモア
孫家邦
栄えある賞に選んで頂きましたこと、大変有り難く思っております。心より御礼申し上げます。
2014年に今回と同じく菊地美世志と共に奨励賞を頂きました。8年経った後にまた2人揃って評価の機会を頂きましたことが格別に嬉しく、20代に荒戸源次郎の下で出会ってから今日まで二人三脚でやってきた作業の一つ一つを愛しく思い返しております。
昨今は自主映画、インディペンデントという名で分類されているようですが、当時は「アングラ」と称されていた、ちょっと奇妙で傍若無人な集団からの出発でした。業界の重鎮に「おじさんさぁ、威張ってるけど偉いの?」って率直な質問をしたことがあります。頭領の荒戸からして、『鉄拳』公開の際に「(配給の)松竹に行って理由は何でもいいからケンカしてこい」などと言う始末です。
そのような出自の私たちを面白がって企画を採用して下さった奥田誠治さん、中川滋弘さん、秋元一孝さん、尾越浩文さん、福田一平さんを始めとする度量の大きい諸先輩方にこの場を借りて感謝(と謝罪)の気持ちをお伝えしたいと思います。
また『花束みたいな恋をした』には実はもう1人、プロデューサーがいます。那須田さん、あなたがいなければこの作品を世に送ることが出来なかった。本当にありがとうございました。また一緒に仕事をさせて下さい。
厄年が終わった40代半ば、公私共に破綻寸前だった頃、映画をやめなければいけない、と鈴木清順監督に弱音を吐きました。
「アンタ、何を言ってんの。俺がツィゴイネル撮ったの60手前だぞ。まだまだだ。」
信じてなかったけど、清順さん、あなたが言ったこと、本当でした。これから出会う後輩にも伝えます。
「まだまだだ」!!!
○テレビプロデューサー賞
大河ドラマ「青天を衝け」
NHK
菓子 浩
この度は、名誉ある賞を頂き、心より御礼申し上げます。チーム全体で頂いた賞だと思います。『青天を衝け』に力を結集してくれた全てのスタッフ、キャストの皆さまと、この喜びを分かち合いたいと思います。
『青天を衝け』は、とてもチャレンジングな企画でした。主人公の渋沢栄一は、大河ドラマらしい誰もが知っている“ヒーロー”ではありません。しかも、明治以降は時代背景が複雑で描きにくい。それでも、度重なる逆境にもめげることなく、つねに前を向いて走り続けた渋沢栄一の人生に惹かれました。
脚本の大森美香さんは、段ボール14箱にも及ぶ膨大な史料と格闘しながら骨太なドラマを紡ぎ、キャストの皆さんがそのセリフに命を与えてくれました。なかでも、主演の吉沢亮さんは、次々に立場を変えていく難役を13歳から91歳まで見事に演じきり、多くの感動を残してくれました。
終始、コロナ禍での収録となった制作現場は、本当に苦労の連続で、「もうダメか」と思ったことも何度かありました。それでも走り続けることができたのは、視聴者の方々からの温かい応援があったからこそです。この場をお借りして、感謝申し上げます。
渋沢栄一は、古希を機に実業界を引退し、亡くなる直前まで平和を訴え続けました。今、ウクライナからの映像が毎日届いています。フィクションに関わる私たちに、何ができるのか? 答えは見つからないかもしれませんが、考え続けていきたいと思います。
只今撮影中
ドラマ 「持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜」
TBS
中島 啓介
コロナの時代を経て、ドラマの撮影環境も大きく変化しましたが、同時に今の時代を生きる私たちの価値観も、数年前とは大きく変化していると感じます。
多様な価値観が自由な時代。多様な愛の形も自由な時代。そんな現代の結婚観や人生観を題材としたオリジナル作品であるTBS火曜ドラマ「持続可能な恋ですか? 〜父と娘の結婚行進曲〜」を、現在撮影中です。
上野樹里さん演じる主人公は、ヨガのインストラクターという職業。私自身、これまでは「ヨガ=ポーズを取ること」だと思っていましたが、ヨガのインストラクターの方々に取材をさせていただく中で、ヨガにおいてポーズというものは8つあるベースの考え方(八支則)のうちの一つに過ぎないということを知りました。ポーズよりも、その根底に流れるのは、「人として心地よく生きるための基本的な考え方」。体が硬かったり、体を動かしたりするのが苦手でも、ヨガ的思考をもったり呼吸を意識したりするだけで、心も体もスッキリと軽くなる。そこには、「人と比べてしまう」「頑張りすぎて疲れてしまう」、など不安や悩みも多い私たちの心をほぐしてくれるようなエッセンスが詰まっており、ヨガ思考が体系的に編集されてから約1600年の時を経て、改めて今を生きる多くの方々の道標となっているようです。
また、松重豊さん演じる主人公の父親は、辞書の編纂者という職業。辞書というのは、「時代 を写す鏡である」と言われる通り、日本語の「意味」は価値観の「変化」にすごく敏感です。例えば、「恋愛」という言葉に対する語釈は、かつては「“男女の間”で恋をして相手を大切に思う気持ち」という言葉でしたが、前々回(2014年)の改訂版から“男女の間で恋をして〜”という部分が“お互いに恋をして〜”というように修正されたそうです。語釈の変化は価値観の変化の現れ。常に世の中の変化に心をそば立てる必要のある職業というのは、テレビ番組を制作する私たちとも、近しいところにあるような気がしています。
そんな父娘を演じる上野樹里さん、松重豊さんを中心に撮影は順調に進んでいます。コロナの影響で撮影環境も大きく変化するようになってから早2年。今となってはキャスト・スタッフ共に、すっかりその変化に順応しながら1話1話の撮影を進めています。
タイトルにもある「持続可能」という考え方も世の中に定着しつつある今。たくさんの変化を体感し、楽しみながら、最終回に向けて撮影に励んでいきたいと思います!
私の新人時代
㈱松竹
嶋村 希保
私が最初に就いた作品は、TBSのスペシャルドラマ「命なりけり」でした。セット撮影は懐かしの大船撮影所。当時、所内ではテーマパークの建設が進んでいて、伐採予定の桜を「最後の花見だ」と所内の人たちが感慨深げに宴会をしていました。進行見習いだった私は、出演者やスタッフに及び腰でコーヒーを配る日々でした。その後、50歳も年の離れた大プロデューサーの下につくことになりました。作品に入る前に喫茶店に呼ばれ「お金、女性、お酒の扱いに気をつけなさい。」あなたは女性だから一つは関係ありませんね、と続けて言われました。当時の私はプロデューサーの仕事がよくわかっていなかったので、大先輩のありがたい訓示も何のことやらさっぱりでした。スマホもPCもない当時、大事な情報は、助手を素通りして監督やメインスタッフと共有し協議をしていたからかもしれません。何か問題が起きても私は蚊帳の外でした。
そんな私に転機が訪れたのは、初めて女性プロデューサーの助手になった時でした。取材や打ち合わせに一緒に参加させてもらい、常に行動を共にし、近くで見せてもらったことが仕事を覚えるきっかけとなりました。その中にはもちろんきれいごとでは終わらない交渉事もありました。当時はまだまだ女性のプロデューサーが少ない時代。同性の私と彼女はロケの宿泊やスタジオの仮眠室が同じなのはもちろん、撮影以外の食事も一緒。さらに束の間の休日に映画を観たり旅行したり、仕事も遊びも関係なく時間を過ごしました。そんな日々が3年弱続きましたが、彼女の異動で突然終わりました。
その後、私も助手の肩書が外れ独り立ち。再び同じ部署となったのは7年後。今は意見が食い違い争ったりすることもありますが、気軽に相談できる貴重な存在です。当時と比べると女性プロデューサーも多くなりましたが、性別関係なく良き先輩との出会いは大切なものです。
事務局だより
◎退会
青木 信也(NHK)
原林 麻奈(NEP)
吉田 雅夫(NEP)
◎訃報
中尾 幸男 功労会員(元電通)2021年12月6日逝去 75歳
中島 忠史 特別功労会員(元NTV) 2022年1月27日逝去 86歳
◎第72回 プロデューサー協会 親睦ゴルフ会を次により開催予定です。
《日時》2022年5月15日(日曜)
競技方法 新ぺリア方式 8時56分アウトスタート(5組予定)
《場所》越生ゴルフクラブ
〒355-0354 埼玉県比企郡ときがわ町大字番匠61 ☎0493-65-1141
関越自動車道鶴ヶ島インター下車15分、東武東上線坂戸駅下車、クラブバスあり
《会費》22,000円予定(プレー費、商品代、パーティ―費含む)
《締切》4月25日(月曜)事務局必着 注 GW関連で早めの締切になります。
※初めて参加される方は事務局までメールにてご連絡下さい。(info@producer.or.jp)
前回同様、コロナ感染拡大予防対策を留意の上、個別膳にて表彰式を致します。
親睦委員会:髙橋、玉川、山本
インフォメーション
◎会議の記録
2月 3日(木) 第46回エランドール賞授書式中止。17時 受賞者発表
2月15日(火) 17時00分~ 第6回会報委員会(リモート)
2月25日(金) 18時30分~ 第7回定例理事会(東映本社8階会議室)
◎会議の予定
3月22日(火) 18時20分~ エランドール賞(新人賞除く)授賞式
3月22日(火) 19時30分~ 第8回定例理事会(ともに東映本社8階会議室)
3月29日(火) 17時00分~ 第7回会報委員会(リモート)