No.496 2022年 4・5月号
エランドール賞 受賞の言葉
○映 画(プロデューサー賞)
映画「花束みたいな恋をした」フィルムメイカーズ
菊地 美世志
私は40年ほど前、故原田芳雄さんから「お前は創る方が向いている荒戸源次郎の所へ行け」と言われ、そこで今回共に評価を頂いた孫家邦と出会いました。
アウトロー映画製作者の荒戸源次郎とアウトロー俳優の原田芳雄の下で育った怖いもの知らずの若造二人でしたから、独立すると貧乏な上に乱暴な映画を創り始めてしまい今思うと赤面する次第です。
菅原文太さんから「貧乏プロデューサーに金を出させられるか、その代わり良い映画を作れよ」と事あるごとに食事を馳走して頂き、緒形拳さんは私たちが提示したギャラに驚かれ、あきれたように、「お前達は凄いな、いや良いんだよ良い、その代わり良い映画を作れよ」と励まされました。
スタッフから「面白そうじゃない、諦めるなよ」と後押しされ、そんな企画を面白がって採用して下さった方々に出会えた事で成立した映画もあります。私はそんな皆様から異口同音に「その代わり良い映画を作れよ」と言われた事を重く受け止め続けなければと思っております。
脚本に拘わった芳雄さんが新人企画だと多少難があっても出演するのを不思議に思っていると「新しい才能は下から出てくるんだ、それを見れるなら面白いじゃないか」と言われたことがあります。今まで出会えた皆さまからもこうして御助力頂いたのだろうと思うと、今年、奨励賞に岡田さん、藤森さんと若いプロデューサーが選ばれたのは素敵な事です。
若い才能を正当に評価されて、且つ私どものようなおっさんにも心配りを頂ける価値あるエランドール賞を頂けた事を誇りに思い、改めて心より感謝申し上げます。
「良い映画を創りましょう!!」
○テレビプロデューサー賞
大河ドラマ「青天を衝け」NHK
福岡 利武
栄えある賞に選んで頂きましたこと、大変有難く、心より御礼申し上げます。多くのスタッフ、キャスト全員への賞だと思っております。大河ドラマ「青天を衝け」での私の仕事は、全体からしてもほんの僅かです。微々たるものです。大河ドラマの仕事量はあまりに膨大で、多くのスタッフが全力で取り組んで出来上がったドラマです。主人公の渋沢栄一は、いかなるときも諦めず、全力で誠意を持って生き抜いた人です。我々は辛く厳しい状況のときには、「栄一さんを想って諦めず進もう。」「とにかく生き抜こう」とよく言ったものでした。諦めず腐らず進めば、いいことがあるんですね。はい。
私個人のことで言えば、地元の徳島新聞にエランドール賞のことが大きく掲載されました。子供のころから賞、表彰などまったくもって頂いたことがなかったので、両親から「すごいカタカナの賞をもらってうれしい。賞なんて初めてだ」。姉からは「部屋のすみっこで挟まっていた利武がこんな賞をもらって素晴らしい!」というお祝いのメールをもらい、親孝行できました。諦めず腐らず進めばいいことはあるんです! はい。
これからも、見たことのない新しくて、おもしろいコンテンツをつくっていこうと思いました。ありがとうございました。
○映画プロデューサー奨励賞
映画「東京リベンジャーズ」フジテレビ
岡田 翔太
この度は、このような栄えある賞を頂き大変有難く思っております。心より御礼申し上げます。『東京リベンジャーズ』は当時まだ20代だった私が、初めて単独で任されたプロデューサーとして処女作とも言える作品です。そんな一本がこんなにも大ヒットしてまさか賞まで頂けるなんて、もし企画当初の過去にタイムリープして自身に耳打ちしたとしてもきっと信じなかったと思います。
撮影をしていた2020年は、人類が初めてコロナ禍に直面していた時期で、必死にもがき続けましたが撮影を途中で中断せざるを得ない状況まで追い込まれる事もありました。キャリアの無い自分に出来ることは、熱意を以て最後まで諦めず作り続ける事だけ、と思って日々邁進していたのに、それでも“諦める”という決断をリーダーとしてしなければいけなかった事が悔しく主演の前で泣いてしまった事を今でも覚えています(というか度々イジられるので忘れさせてもらえません)。それでも1年間かけて完成までたどり着くことが出来たのは、どんな状況でも最高の画を撮る事に拘り続けてくれた英勉監督、私の荒唐無稽な野望を実現してくれたスタッフの皆様、そしてこの作品に魂を燃やして臨んでくれた俳優部の皆様のお陰です。何度も言っているので、きっと伝わっていると思いますがこの場を借りて改めて感謝致します。
まだまだ若輩者ですが、これからも新しい世代の代表作を作り続けられるよう精進致します。
○テレビプロデューサー奨励賞
ドラマ「ハコヅメ ~たたかう! 交番女子~」日本テレビ
藤森 真実
この度は、大変名誉ある賞を頂きありがとうございます。 まず何より、この場をお借りして、キャスト・スタッフ、このドラマに携わってくださった方々に、心から感謝申し上げます。新型コロナウィルスの感染拡大の中、無事に放送することができたことは、一緒に作り上げてくださった皆さまのおかげだと思っております。
本当にありがとうございました!
この企画を立ち上げた時、私の中で明確なテーマがありました。「あなたがいるから頑張れる」隣に信頼できる人がいることが、どれだけ人を強くして、生きるパワーになるのか。
戸田恵梨香さんと永野芽郁さんが演じてくださった主人公2人から、少しでも多くの視聴者にこのメッセージを届けられたら思っておりました。と言いますのも、コロナウィルスが蔓延してからというもの、改めて、人との関わりについて考えさせられ、周りの人たちの大切さに気付かされたからです。そして私自身、このドラマの現場でも、自分を信じて受け入れてくださる方々がいることが、どれほど仕事において、そして人生において大切なことなのか感じることができました。そんな方々と「ハコヅメ」を作ることができ、このような素晴らしい賞を頂けたことは、一生忘れません。この賞に恥じることのないよう、今後とも良い作品を皆さんにお届けできるよう精一杯頑張りたいと思います。
只今撮影中
2022年度前期 連続テレビ小説 「ちむどんどん」
NHK チーフ・プロデューサー
小林 大児
現在放送中の連続テレビ小説「ちむどんどん」。序盤の舞台は、1960年代からの沖縄本島北部、やんばる地域です。シナリオづくりのために脚本家の羽原大介さんと沖縄を訪れたのは2020年の夏でした。羽原さん、そしてチーフの木村Dとも話して、「ドラマで直接そういう話は描かないでしょうが」という前提ありきで、まずは南部戦跡、平和の礎などを回ったことが印象に残っています。
収録の開始は2021年の9月。沖縄ロケは同年11月から12月にかけて。主演の黒島結菜さん、母役の仲間由紀恵さんが、やはり沖縄ご出身ということで、沖縄の風と光の中でリラックスした佇まいでいたことをよく覚えています。
コロナ禍ということで、全体に緊張感はありましたが、黒島さん、竜星さん、川口さん、上白石さん、兄妹4人が揃ってお芝居するのが沖縄ロケが初でしたので、四人の皆さんは沖縄の空気の中で「兄妹の絆」みたいなものを確認できたようで、日に日に呼吸の合った、気の置けない笑顔の関係になっていくのが頼もしかったです。
そして天気。制作部が渾身の努力で探しぬいたロケ場所に、美術部が明確な思いで飾りを施したところに…快晴の沖縄の太陽が降り注いだ時、「ああ、沖縄に来た甲斐があったな」とほっとしました。
序盤戦は四兄妹の子役時代でもあります。大人の四人の場面もあれば、子役たちの場面も。沖縄の海と空の間で、兄妹そのもののようにじゃれ合う子供たちに、大人の役者もスタッフも一同癒されました。
そんな子役たちがいちばんがんばってくれたのは、芝居はもちろんですが加えて「沖縄ことば」です。吹き込まれた音源を丁寧に聞き込んで、「ちゅらさん」も手掛けたことば指導の藤木勇人さんも感動するような仕上がりになっています。朝ドラならではのローカル色の豊かさが、ロケの風景だけでなく、子供たちの言葉からも匂い立つ魅力を、是非全国の皆さんに味わっていただきたいです。
そしてもちろん、この番組の主役のひとつが「料理・食べ物」。主人公が東京のレストランで修業しますので、西洋料理も画面を彩りますが、なんといってもいちばんは沖縄料理。シークワーサー、沖縄そば、サーターアンダギー、ソーミンチャンプルー、フーチャンプルー、ゴーヤーチャンプルー、足テビチ、ラフテー、島ラッキョウ……。枚挙にいとまがない特色豊かな料理の数々を、気持ちよく美味しくいただく黒島さんをはじめ出演者の皆様の食べっぷりにも是非ご注目ください!
私の新人時代
テレビ東京ドラマ室
北川 俊樹
新卒で制作会社に採用され、初めはAPとして、数年後にプロデューサーとして、その後テレビ東京に移ってから現在に至るまで、10年ほどドラマ制作に携わってきました。入社してすぐに担当したのが単発ドラマ、いわゆる2時間サスペンスです。その後数年間APという立場で、制作準備、ロケ、そして編集、その編集が終わる前に次のドラマの制作準備、ロケ、編集…といった流れを繰り返し、いくつかの単発ドラマを掛け持つ状態が続きました。
そんな中で最も過酷であり、同時に最も楽しかったのが全編地方で撮影する旅情モノの単発ドラマです。大体2週間程度、地方ロケに行きっぱなし。皆様におかれましては釈迦に説法に違いないですが、改めて宣言します。地方ロケの下っぱは地獄です。消した端から増えていくto doリスト、プロデューサー不在が当然のため、日々のプレッシャーも大きい。おそらくロケ中の2週間はアドレナリンが出続けていたのでしょう。帰ってきてから2日間は立てないほど疲弊していたのを覚えています。
そんな辛いはずの2週間だったのですが、今でも覚えていたり時に思い返したりするのは、私のような若造に親切にご対応くださった旅館のご担当者であり、ドラマと共に地元を盛り上げようと一生懸命なFCのご担当者、そして明日の出発も早いのに夜中にこっそりとお酒を酌み交わしたスタッフや、そこに同席して映像論を熱く語り合ったキャストの面々です。
地方ロケは不思議です。その時にしかできないあの一体感。いつもとは違う土地、見知らぬ土地だからこその画が出来上がっていく高揚感。大変であればあるほど良いというわけでは決して無く、皆一丸となって同じ方向に向かうという意味で、この仕事において大事なことを缶詰状態の環境から学んだ気がします。
コロナ禍における時世でも、少しずつ地方ロケを行う組も増えてきましたが、まだまだ予断を許さない状況には違いありません。いつかまた、日本のどこでも、あるいは海外においても、伸び伸びと撮影ができる日が戻ることを願うばかりです。
事務局だより
◎退会
金田 耕司(日本映画放送株式会社)
インフォメーション
◎会議の記録
3月22日(火) 18時20分~ 第46回エランドール賞授賞式(東映本社8階会議室)
3月22日(火) 19時15分~ 第8回定例理事会(東映本社8階会議室)
3月29日(火) 17時~ 第7回会報委員会(リモート)
4月 6日(水) 10時15分~ エランドール賞新人賞出張贈呈(山田裕貴さん)(テレビ朝日)
◎会議の予定
4月18日(月) 時間未定 エランドール賞新人賞出張贈呈(川口春奈さん)(都内スタジオ)
4月20日(水) 17時~ 第8回会報委員会(リモート)
4月26日(火) 14時~ 親睦委員会
4月29日(金) 時間未定 エランドール賞新人賞出張贈呈(広瀬アリスさん)(フジテレビ)
5月10日(火) 時間未定 エランドール賞新人賞出張贈呈(仲野太賀さん)(都内ホテル)
5月15日(日) 親睦ゴルフ会(越生ゴルフクラブ)
5月20日(金) 15時~ 監事監査会(協会事務局)
5月27日(金) 18時30分~ 第9回定例理事会(東映本社8階会議室)
※エランドール賞新人賞出張贈呈は、随時行ってまいります。
なお、授賞式の模様は6月18日(土)12時より(内容30分)日本映画専門チャンネルで、放送が予定されています。