会報

2024.05.27

会報

No.515 2024年 5月号

山崎 貴 監督 特別インタビュー

「私の監督人生」

少年時代は信州の松本だったので、自然が豊かで昆虫が好きな少年でした。
絵を描くことも好きで、今に繋がっているかもしれないですね。
最初はテレビの「怪獣もの」が入口で『ウルトラマン』とか『ウルトラセブン』に夢中になって。ある日、神社で遊んでいたら、漫画雑誌が捨てられてあって拾い読みしたら「怪獣映画の作り方」という特集で、こういうのを仕事にしている大人がいるんだ! うらやましいなと思いました。何年か経って、『スターウォーズ』と『未知との遭遇』が、日本公開されて、とてつもないものを観たなと衝撃を受けました。それで中学3年の時に友達と一緒に、宇宙船の模型を使ってVFXを使った映画を作ったんです。学園祭で上映したら大人気になりました。「興行」的にも成功したんですね。
映画について、よく「娯楽性」とか「芸術性」とか言われますが、僕の場合は圧倒的に「娯楽」重視ですね。地方のおばちゃんでも、「『ゴジラ』の評判良いから観に行こう」って楽しんでもらえるのが一番ですね。「芸術性」志向は、もちろん否定はしませんが、お客さんが来る映画を作る、その中に少しだけメッセージ性も入れる。多層構造の映画が出来ればと思ってます。
美術の専門学校で、様々な映像技術を学んだのですが、その時に「白組」のバイト募集があって応募したんです。そこで島村(達雄・「白組」初代社長)さんに出会いました。「ウチに来ないか」と誘ってくれて。そして21歳のころですが、調布に作られたVFXのスタジオを任されたんです。
そこではCMや博覧会の映像製作をVFXを使って制作していたんですが、伊丹(十三)さんの映画でVFXを何本か担当しました。この伊丹さんとの出会いも大きかったですね。映画監督としての振る舞いは伊丹さんの現場で教えてもらった気がします。
『鵺/NUE』という作品を企画するんですが予算面で成立せず、初めて監督したのは00年の『ジュブナイル』です。監督デビュー作で興行的にもまあまあ成功しました。
僕はずっとSF映画を作り続けたかったんですが、僕を監督にしてくれた阿部秀司(「ROBOT」初代社長)さんが「昭和の映画を作りたい」と言い出しまして。当時「昭和ブーム」でしたが、「核になる作品がないから、作りたい」との話でした。『ALLWAYS 三丁目の夕日』は、僕も西岸さんの漫画は好きで読んでましたし、大好きな作品でしたが、地味な「人情噺」だし、そのくせお金はかかるし、当たるのかなと思ったんですが、昭和30年代の映像再現も受けて大ヒットしました。続編では、オープニングでゴジラを登場させています。
「ゴジラ」は、東宝の「本丸」みたいな作品ですし、いつかはやりたいなという気持ちはありました。ただ『シン・ゴジラ』が傑作だったので、この後、作るのは大変だなあと。何年か経って、そろそろ話しが来そうだなという感じもあったんですが、ちょうどその頃VFXで、水をコントロールする技術が向上して、海でゴジラが暴れるというイメージが可能になりました。『スターウォーズ帝国の逆襲』のポスターを描かれた生頼範義さんの軍艦を描いた画集にもインスピレーションを受けました。
コロナの影響で製作が遅れたというのもあって、結果的にタイミングが良かった。
ゴジラを引き受ける条件は、時代設定としては戦争末期から敗戦直後の時代で描きたい、と。
東宝としては、初代のゴジラの前の時代は、タブーだという認識だったと思います。
それでも結局、「やりましょう」と決断してくれた。僕は、敗戦で何もない日本にゴジラが襲来する、戦う術がないのに知恵を絞って戦わなければという、このシチュエーションこそが正に映画なんだと思いました。
奇しくも、『オッペンハイマー』と同時期にアカデミー視覚効果賞の受賞となりました。時代設定が重なるので注目もされました。『オッペンハイマー』を見て、いつかこのアンサーを撮りたいなとおもいました。(世界の)為政者たちに、核を落とすということは、こういう事なのだと、核とか戦争に対して、現実を見せつけるような物を作りたいんです。
アメリカでインタビューされていくうちに、「ゴジラ-1.0」のテーマが、僕自身にはっきりと見えて来ました。ゴジラ映画を作るということは、日本人の宗教観というか、戦争や核兵器といった「忌まわしき物」を鎮めるという事なんじゃ無いかと。
ゴジラ映画は、一種の「お神楽」なんだと。そういう感覚が潜在意識の中に共有されているのが、和製ゴジラなんじゃないかなと思うようになりました。
邦画がエンタテインメントとして、海外で興行的にも成功する事が出来たのは大きいと思います。
MLBにパイオニアとして野茂が挑戦して成功した。イチロー、松井、大谷らが続いた。
そうした状況がエンタメの世界で実現出来ないかなと思います。愚かかも知れませんが、僕自身挑んでいけたらと思います。
『ゴジラ-1.0』が連れて行ってくれた世界ですが人生の一部を、そんな挑戦にも使っても良いかなと思っています。
(聞き手・市川哲夫)



只今撮影中

4月期 土ドラ9「花咲舞が黙ってない」

日本テレビ
能勢 荘志

この春の改編で日本テレビは、土曜の夜9時にドラマ枠『土ドラ9』を新設し、10時からの『土ドラ10テン』と2段積みでドラマコンテンツを放送することになりました。
そんな新枠の第1弾は「花咲舞が黙ってない」です。池井戸潤さん原作の大ヒットシリーズの新作を、満を持してこの春にお届けしています。2014・2015年に小説『不祥事』等を原作に制作した連続ドラマが10年の時を経て、キャストを一新して帰ってきました。
ただし、このドラマはいわゆるリメイクではありません。前作の放送後、ドラマのタイトルを逆輸入して、読売新聞の連載小説として書き下ろされ、のちに文庫化された小説「花咲舞が黙ってない」。それを原作として初めてドラマ化したのが、今回のシリーズです!
花咲舞を演じる主演は、今や日本国民の誰もが見たいヒロインと言っても過言ではない今田美桜さん。地位も権力もない27歳の女性行員が、旧態依然とした銀行内の悪事に真正面からぶつかり倒します。
そのバディで、出世を諦めた元融資マンの相馬健を演じるのは、山本耕史さん。そんな二人の前に立ちはだかる新たな強敵・昇仙峡玲子を演じるのは菊地凛子さん。さらに舞と相馬の上司の支店統括部次長・芝崎太一を演じるのが、ずんの飯尾和樹さん。昇仙峡の上司で将来の頭取候補、経営企画部長の紀本平八を演じるのは要潤さん。錚々たる皆様にご出演いただいています。
そして、居酒屋「花さき」の店主で舞の叔父・花咲健を演じるのが、上川隆也さん。前作では相馬健役を演じていた上川さんに、今回も別の設定でご出演いただけたことは、前作への強いリスペクトとオマージュ、そして新たな作品へのリニューアル感を象徴するとても重要なキャスティングとなりました。
スタッフも脚本の松田裕子さんや南雲聖一監督、AX−ON鈴木香織プロデューサーはじめ、我々前作から続投のスタッフに加えて、脚本のひかわかよさん、小田玲奈プロデューサーはじめ新たなスタッフも加入し、全力で令和版の新作「花咲舞が黙ってない」を制作しています。
10年前の「花咲舞」で、私はフリーランスの助監督として初めて日本テレビの連続ドラマに携わり、主に銀行に関することを担当していました。その後、ご縁があって日本テレビに入社し、今また、このドラマを担当させていただけていることに改めて感謝いたします。
そして、2022年に惜しくも鬼籍に入られた加藤正俊プロデューサーのクレジットを『シリーズプロデューサー』として残させていただけたことについても関係各所に感謝いたします。
新生「花咲舞が黙ってない」ぜひお楽しみください!

花咲舞が黙ってない

花咲舞が黙ってない


私の新人時代

テレビ東京 配信ビジネス局 ドラマ室
吉川 肇

7年前、バラエティの新人ADだった僕は不安に押し潰されかけていた。5時間近くの音楽特番の生放送当日。夜通しの準備やリハーサルが連日続き、不眠不休で極限状態のスタッフたちの異様な緊張感があった。僕の仕事は「乗馬しながら歌唱する演出」を成功させる為に送り込まれた中継先のフロアAD。人生初の生放送で、何も喉に通らないほど緊張していた。「オマエ、生放送は初めてか?」この日、僕が組むことになっていたフロアDの先輩が声を掛けてくれた。「生放送は“祭〟だから、どうせならこの緊張感も楽しんだ方がいいよ」すでに10年目で数多の修羅場を乗り越えてきた先輩は余裕に満ち溢れていた。「空き部屋でゲームしてるから夕方また呼んで」先輩はそう言い残し、お昼の弁当を2個持って颯爽と立ち去った。自分との格の違いに畏怖すら覚えた。その後のリハーサルも完璧に仕切り、「今日の生放送、実家の両親にも連絡して見てもらいな」と後輩の親まで気配りしてくださる先輩が誇らしく、意気揚々と家族に連絡した。遂に迎えた生放送。「まあ何かあったら俺に頼ってよ」もう何も怖いものはない。我々の祭を祝うかのように炭酸ガスが発射され、馬に跨がった演者が堂々の登場。圧倒的な歌唱と奇抜な演出で盛り上がると思われた瞬間…馬が暴れ出した。想定とは全く違う方向に暴走する馬、鳴り止まないインカムからの怒号、恐怖に慄く観客…地獄絵図と化した現場にパニックになった僕は「そうだ、僕には頼もしいせ…」と先輩を見たら、僕の8000倍テンパっていた。我々は泡を吹く程テンパりあい、カメラだけには見切れぬよう馬から逃げることに徹し、何とか中継を終えた。結果、先輩と僕が逃げ惑う姿はバッチリ放送されていた。関西に住む両親もすごく心配していた。余談だが、この「暴走馬歌唱生放送」は類を見ない演出として某大学の教材に載ったらしい。ドラマでも教科書に載る作品が届けられるように頑張ります。



事務局だより

◎正会員入会

関川 友理((株)TBSテレビ)
韓   威(日本映画Vision株式会社)
藤沼  聡(フリー)


◎退会

植田 博樹((株)TBSテレビ)



インフォメーション

 ◎会議の記録

 4月  7日(日) 16時00分~ 山崎 貴 監督インタビュー・(代官山)

 4月24日(水) 16時00分~ 組織強化委員会・(事務局会議室)

 5月  7日(火) 17時00分~ 第8回デジタル編集委員会・(リモート)

 5月11日(土)  9時00分~ 親睦ゴルフ会議(越生ゴルフクラブ)

 5月21日(火) 16時00分~ 監査役会議(事務局会議室)

 5月22日(水) 18時30分~ 第10回定例理事会・(東映本社8階会議室)

 ◎会合・会議の予定

 5月28日(火) 17時00分~ 第9回会報委員会(リモート)

 6月19日(水) 17時00分~ 第11回定例理事会・(東映本社8階会議室)

 6月19日(水) 17時30分~ 第48回通常会員総会・(東映本社8階会議室)



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